金漆と透金漆塗について

金漆
2012年から平安時代に途絶えたとされ、延喜式にも出てくる金漆という塗料の復元作業に携わってまいりました。中国では三国志にも出てくる塗料で、江戸時代にはかの新井白石もこの塗料について書いています。
ウコギ科のコシアブラ・タカノツメ・カクレミノのいずれかの樹木の樹液かまたは3本の樹液の総称か…? 未だ多くの資料文献でも金漆がどの樹の樹液かを特定できているものはないようで、元々金属製の武具に塗り、金色に光らせ、錆止めや儀式用装飾として使われ、また牛の革に塗った上の3種の樹を関東2カ所の場所で調査した結果、樹液が一番多く採れた樹はカクレミノでした。その事から出品している作品に用いた金漆はカクレミノから採取した樹液です。勿論調査した本数や場所に制約があったので、これによって金漆がカクレミノ樹液だと断言するものではありません。
今回、作品に塗ってみるとニスやクリアーラッカーのような塗料に見えます。しかしながら平安時代では琥珀色で透明感のある塗料は他にはない神この塗料の採れる量は漆に比べて1/6以下と少なく、漆ほどの強い塗膜が得られないこともあり、平安時代以降途絶えていったものと個人的に推測しています。金漆だけで塗った作品は、日常使いというよりは、もう少し頻度が少ないと思われる、お茶道具としてお使い頂ければと考えています。

透金漆塗
金漆の塗膜は漆と異なり、紫外線に当てると乾くという不思議な性質を持った塗料です。漆のように湿度を与えて乾くという塗料ではありません。
その上漆のような塗膜強度がありません。その弱点ともいうべき強度を増すために、漆と混ぜてはどうかと考えました。金漆と漆の混合液を数種類作って試行錯誤を繰り返し、その混合液塗膜を硬化させることが出来ました。
今回、その塗を透金漆塗として初めて発表させて頂きました。
まだまだ入り口に辿り着いたところですが、今後も工夫してより良い器作りに使いたいと考えています。
研究者ではないので、金漆について植物学的、また歴史学的な部分に不十分な部分もあるかもしれませんが、個人的な見解としてご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
                                              2015年12月 本間幸夫